2022/04/06 『地下出版のメディア史──エロ・グロ、珍書屋、教養主義』刊行

2022年3月、拙著『地下出版のメディア史──エロ・グロ、珍書屋、教養主義』が慶應義塾大学出版会より刊行されました。

戦前昭和に風俗壊乱処分に処された「軟派出版」と呼ばれたジャンルの出版物に光を当て、「高級エロ」を自称した出版人らが紡ぐ独自のメディア文化圏を析出したものです。ぜひお手にとってご覧ください。

https://www.keio-up.co.jp/np/detail_contents.do?goods_id=6208

地下出版のメディア史
エロ・グロ、珍書屋、教養主義


序 章 教養主義の「裏通り」
 1 知的上昇と、「エロ・グロ」の交差点
 2 先行研究と本書の立場
 3 用語の定義──「地下出版界」を捉えるためのキーワード
 4 分析方法
 5 本書の構成

 第一部 地下出版界の前史

第一章  〈社会運動〉としての自費出版同盟――毒舌和尚・今東光と雑誌『文党』の挑戦
 1 軟派出版前史──『文党』の創刊
 2 文壇のオルタナティヴを目指す
 3 街頭でのパフォーマンスと超党派性
 4 「自費出版同盟」構想の内実
 5 構想の失敗と、軟派出版への新たな兆し

第二章 文藝市場社の「誕生」――烏山朝夢から梅原北明へ
 1 梅原北明という演出者
 2 「赤色」と「桃色」を往還する 
 3 朝香屋書店から文藝市場社へ

第三章  「直筆原稿」のメディア論――文藝市場社の設立と直筆原稿叩き売り
 1 梅原北明と雑誌『文藝市場』の誕生
 2 雑誌『文藝市場』の創刊
 3 〈破棄される原稿〉への想像力
 4 アヴァンギャルド芸術と労働争議のなかで
 5 軟派出版界への足掛かり

 第二部 地下出版界の成立過程

第四章 〈変態〉な教養/教養としての〈変態〉――逆立ちした教養主義
 1 〈変態〉という新規財貨
 2 カタログ化される〈変態〉
 3 「趣味的研究」の系譜と趣味家のエートス
 4 逆立ちした教養主義
 5 水平的な連帯の愉しさ──「珍妙変態行楽」の開催
 6 「反-教化メディア」の教養観

第五章 愛書趣味とオブジェとしての書物――軟派出版界と限定本の快楽
 1 愛書趣味の涵養
 2 伊藤竹酔と軟派出版界
 3 円本と大衆的教養の時代
 4 艶本叢書の登場と予約全集/円本との差異化
 5 「あるべき書物像」の体現
 6 パラテクストを通じた愛書趣味の涵養
 
第六章 〈談奇〉の表象と東アジア――理想郷イメージとしての上海
 1 東アジアに向かう視線
 2 「上海」へのまなざし
 3 「国際的な一歩」としての上海移転
 4 〈談奇〉のネットワークと「近代」への応答
 5 「東アジア」に広がる地下出版界


 第三部 地下出版界の成熟と瓦解

第七章 「地下出版」の最期――大衆化するエロ・グロ・ナンセンスと珍書屋の受難
 1 広がりゆく「エロ・グロ・ナンセンス」
 2 軟派出版界に吹く“受難の嵐”
 3 「高級エロ」による「通俗エロ出版」批判
 4 軟派出版史の構築と「正統」化の実践
 5 「地下出版界」の成熟と「場」の瓦解

第八章 「裏道の文化」の行方――戦後に残された軟派出版界の残滓
 1 戦時下の「梅原北明」を辿る
 2 カストリ雑誌に現れた「斯界の権威」
 3 〈アブノーマルの共同体〉へ
 4 一九六〇~一九七〇年代、「アングラ」文化に見る足跡

終章 「攪乱」する思想としての地下出版
 1 メディア文化圏としての「高級エロ」出版
 2 軟派出版史を描き出す──メディア史研究への視座
 3 「趣味的研究」のネットワーク──社会学領野への視座
 4 本書の可能性と限界──地下出版界は、「知的共同体」たりえたか?
 5 「教養主義の裏通り」の隘路、受け継がれる「好色の魂」


付録 昭和「地下出版界」関連年表――梅原北明とその周辺
あとがき
参考文献一覧
図版出典一覧
人名索引